CFOメッセージ

収益力と資本効率を高め、
「3つのシンカ」で
2030年の飛躍へ

構造改革で収益力を高め2030年の飛躍への土台を築く

2026年3月期は、売上高が前期比5.7%減の2,690億円となる一方、営業利益は20%増の116億円、営業利益率は4.3%へ改善しました。経常利益も28.2%増の138億円となり、減収の中でも利益を伸ばせたことを当期の大きな成果と捉えています。
その背景には、これまで継続してきた構造改革により、売上規模に依存しない、より筋肉質な財務体質を築いてきたことが、現在の利益改善につながっています。
中期経営計画「TVE(Transformative Value Evolution)」は、2021年から2030年までの10年間を見据えた計画です。第1フェーズでは、財務体質の改善と飛躍への準備を進めました。赤字体質だった事業や地域の構造改革を進め、経営基盤を整えてきました。2024年度からは、財務体質の改善を土台に飛躍を目指すフェーズに入っています。2026年3月期は、「飛躍のYEAR ONE」と位置づけています。そして2027年3月期をYEAR TWOとして、2030年に向けた成長を加速させます。その先に掲げるのが、2030年の売上高4,000億円規模という目標です。
地域ごとの事業も、収益性と成長性の両面から見直しています。日本では工場別管理から顧客別の収益管理へ転換し、工場集約も進めました。中南米は日本と並ぶ収益の屋台骨として事業を支えています。中国では市場環境の変化を受け、事業構造そのものを転換しました。その結果、2025年3月期の赤字から2026年3月期には黒字へ回復しました。東南アジアでは三菱向けシートフレームなどの事業を拡大しています。地域ごとの強みを活かし、収益を確保しながら成長機会を広げていきます。

「3つのシンカ」を通じて新たな成長領域を切り拓く

飛躍に向けた事業戦略の柱が、「3つのシンカ」です。一つ目は「深い深化」で、主力であるシートビジネスの深化です。これまで高めてきた収益体質を維持・強化しながら、事業を拡大します。既存事業を強くすることが、次の成長へ投資する原資にもなります。二つ目は「進む進化」で、次世代の車室空間への価値提供です。自動運転やコネクテッド、EV化など、自動車は大きく変化しています。クルマがネットにつながり、自動で走る時代には、車室の役割も変わります。移動するための空間から、豊かな時間を過ごす空間へと進化していきます。そこに対して、シートを起点とした新しい付加価値を提供していきます。その象徴のひとつが「スマートシェル」です。第2世代では、視覚、聴覚、触覚、嗅覚を取り込んだ没入体験を提案します。車載サイズのシートとして、次世代の車室空間の可能性を追求していきます。そして三つ目は「新しい新化」です。自動車で培った技術を、自動車以外の新しい市場へ展開していきます。シートと医療・介護用ベッドには、フレームやウレタン、シート表皮、リクライニング機構など、技術面で共通する部分があります。こうした親和性を活かし、新たな事業領域への展開を検討しています。モーターホームなど、シートそのものが主役となる市場も候補のひとつです。これらの「3つのシンカ」を通じて、既存事業の収益力と新たな成長力を両立させます。

成長投資と株主還元を両立し資本効率から企業価値を高める

成長投資を進める一方、財務の安全性と株主還元の両立も重視しています。2026年3月期末の自己資本比率は60%を超え、財務基盤は改善しました。シート事業では、顧客の生産変動に対応するため一定の資本が必要です。一方で、資本を必要以上に滞留させず、効率的に活用することも重要です。そこで、我々はROICを経営の重要な指標として位置づけています。TVE Wave2 2027では、3年間で約670億円のキャッシュアウトを計画しています。既存シート事業への投資に約210億円を充て、収益力をさらに高めます。2030年に向けた成長戦略投資には約325億円を配分します。株主還元には約135億円を充て、成長投資とのバランスを取ります。総還元性向は50%以上を3年間のコミットメントとして掲げています。成長のために資金を使うだけでなく、株主への還元も着実に行います。
2027年度の財務目標として、ROE10%、ROIC8%を掲げています。地域別にROICの目標を設定し、毎月その状況をモニタリングしています。利益という分子だけでなく、投下資本という分母も継続的に確認しています。棚卸資産や売掛債権、固定資産の変化を早期に捉え、大きな変動が起きてから対処するのではなく、変化の兆しを捉えて対応します。そのために、日々の正しい業務がROICに直結するという意識を、現場まで浸透させます。
外部環境には、為替、顧客の生産変動、地政学、原材料価格などのリスクがあります。自然災害など、予測を超える事態にも備える必要があります。だからこそ、財務の安全性を確保した上で、成長への資本配分を進めます。
PBR1倍割れの状況を乗り越え、企業価値を高めることも重要な課題です。ROEやROICを活用し、投資とオペレーションの両面から改善を進めます。目指すのは、配当によるインカムゲインと株価上昇によるキャピタルゲインの両立です。
自動車部品事業は、成果が表れるまで時間を要する長期的なビジネスです。受注から量産、モデル終了までのライフサイクルも長く、短期では評価しにくい面があります。投資家の皆さまに、将来のキャッシュフローを生み出す力を理解いただけるように、成長の道筋と実行状況を適宜、開示してまいります。
構造改革によって財務体質を整え、我々は今、飛躍の段階に入りました。既存のシート事業を磨きながら、次世代の車室空間へ価値を広げます。さらに、自動車技術を活かして新市場へ挑戦し、成長領域を広げていきます。その成長を支えるため、資本を適切に配分し、資本効率を高めていきます。財務の健全性を土台に、成長投資と株主還元を両立させます。
我々が目指しているのは、企業価値を持続的に高めることで、数ある自動車部品セクターの中から、タチエスが「真っ先に選ばれる会社」になることです。2030年の飛躍に向け、成長の道筋を着実に実行し、企業価値につなげてまいります。



代表取締役 執行役員 最高財務責任者
Chief Corporate Officer
小松 篤司